Quality

やさしい

▶軟材で繊維が緻密なホオノキで作っているので、手触りもよく、手によく馴染み、木材のやさしい感じが伝わってきます。使われる度に風合いも増してきます。

 

滑りにくい

▶すくう部分に波模様を施しているために具材が滑りにくく、お鍋やフライパンからお皿に具材を移すとき、優しく盛り付けられます。

 

軽くて丈夫

▶一本の材料で木の繊維を活かしながら作る昔ながらの割木工ですので、継ぎ目がなく、折れることがありません。また、ゆっくり乾燥させるので、軽くて丈夫になります。

 

すくいやすい

▶柄に角度を付けているので、具材を掬いやすくしています。また、蛤型は、鍋の縁に合うように緩やかな曲線にしています。

 

毛羽立ちにくい

▶しっかり研いだ刃物で仕上げていますので、木の表面の繊維がキレイに切れて、水に漬けたときに杓子が毛羽立ちにくくなっています。

 

嫌な音が出ない

▶木製なので、金属製の鍋などに当てても嫌な音が出ず、傷も付きにくくなります。

 

具材を崩しにくい

▶金属製のレードルと違って、具材に刺さることがないので、柔らかくなった具材を優しく掬えます。

 

環境に優しい

▶使い古して新しく買い換える際、木製ですので燃やしても有害ガスは出ないのはもちろん、大気中のCO2は増やしません。

 

 

 

 

 

Material

有道しゃくしの主な材料は、地元の山で木の成長が遅くなり、水の吸い上げが弱まる冬期に伐りだされた良質なホオノキの生木を使っています。ホオノキは比較的軟らかく、狂いも少ない木材なので、生木の状態で切削加工しやすいため木杓子作りに向いています。ホオノキはモクレン科の落葉樹で5月~6月初め大きな花が咲きます。葉も大きく、殺菌作用があるため、飛騨近辺では郷土料理の朴葉寿司や朴葉餅に使われています。また、秋に落ちた枯れ葉は山菜や味噌を混ぜた朴葉味噌のお皿としてホオノキは、飛騨では欠かせない大切な木であります。樹皮は漢方薬、炭は漆器や金銀の研磨剤、灰は陶器の釉薬で使われています。木を割れば芯の部分(心材)が青緑色で、周り(辺材)は灰白色ですが、このような心材、辺材の境界は明瞭でハッキリしている木材は珍しく、狂いが少ないうえ、刃先を傷めない為、まな板や日本刀の鞘、下駄、版画用の板に使われているのは有名ですが、麺棒、建具や高級家具、漆器の元にもなっています。新しい杓子を作ることによって森に生えているホオノキを伐採しますが、伐採することによって森林の整備・保全にも役立っております。

 

 

 

 

 

Tools

木取り / 大割鉈, マンリキ, 鉞

荒削り / 片刃鉈

成形時 / 出刃庖丁

窪み加工 / 曲り鉋

その他 / 小鉋, 鑿, 鋸, 曲尺など

 

 

 

 

 

History

晩秋から春先までの約五ヶ月間、ホオノキを主な材料にして、飛騨地方の山奥深い山間地にあり落人伝説が残る大野郡河内郷有道村(現 / 高山市久々野町有道)の約十五戸前後の家で農閑期の貴重な現金収入として作られていた木杓子です。江戸末期から明治初期にかけての飛騨各地域の暮らしや産物などをまとめた『斐太後風土記』(大正四年、五年)では、有道村の記述の中で「有道杓子」が紹介されており、「此村民、冬春は厚朴を伐て、汁杓子を作り賣出す。俗に有道杓子といへり。近来厚朴を伐盡して、白樺又は宇太以の木を以て作り出す。」と記しており、また、岐阜県の林業副産物をまとめた『岐阜縣林産物一班』(大正三年)では、「古来有名にして其の沿革は知るに由なきも今よりも數百年前に着手せるものゝ如し」と古来から伝わっていたような記述や、製造方法、品質、販路、材料が欠乏して代用の木を使ったなどが記されています。

 

木杓子が作られていた有道近辺の言い伝えによると、江戸時代後期、京へ寺社仏閣の建築で従事に出掛けていた大工の庄五郎が材料となる山林が豊富で耕地が少ない有道地区の生計の為、習ってきて伝えたのではないかと定説になっていますが、詳しいことはよくわかっていません。 明治後期の調査では生産数のことが記されており、五万個を越えていたようですが、大正、昭和時代に向けて激減していきました。世界大戦後、物資不足のため木杓子が売れたようですが、復興が進むにつれ金物に押されて売れなくなっていきました。 

 

有道地区は奥地のため、文明文化に閉ざされていた集落は村の将来を思い、昭和四十二年の全戸離村(口有道、奥有道)によって杓子作りも姿を消したかと思われていましたが、高山へ移住した有道出身の三名が観光土産として作られている事がわかり、地元の工芸品が消滅してしまうことを危惧する町民たちによって有道しゃくし保存会が結成され技術伝承を現在に伝えております。この功績が実を結び、平成16年には市の指定無形民俗文化財。平成18年には岐阜県の郷土工芸品。平成28年には文化庁が認定する日本遺産「飛騨匠の技・こころ -木とともに、今に引き継ぐ1300年-」の構成の一部として加えていただきました。 

 

 

 

 

 

Thoughts

子供のころから、自分の机や学校の机を彫刻刀で彫ってみたりすることが好きで仕方なかったぐらい、現在、木杓子作りで削っている時間がとても好きです。市内で開催されている手作り市で実演販売をされていた保存会の会長である清水眞さんと2008年に出会い、ちょうど隣のブースだったこともあって、いろいろお話する機会がありました。熱意を持って杓子作りに向かわれているお姿に感動し、お話していくうちに有道しゃくしのことをいろいろ教えてくださり、また、後継者が育たない現状で杓子作りの伝承が消えてしまうのではないかと危機感がとても感じられました。

 

そこで、清水さんから講習会で木杓子を作ってみないかとお誘いがあり、木工の学校で学んだ経験もあり、興味が湧く分野ですので、少しは生活の糧としていけるかなという思いと、自分が動けば木杓子作りの伝承が残るかなという思いで冬に開かれる講習会に参加させていただきました。

 

現在は年間を通して私を含めて三人ほどしか販売できるような生産をしていませんが、先人の方々や自然の恩恵に感謝しつつ教わった技術をしっかり伝承し、向上心を持って技量を磨き、使いやすくて高品質な木杓子を作れるよう続けて行きたいです。この木杓子を地域の伝統産業として、少しでも生活の糧としていけるようにお求めやすい適正な価格で販売方法を確立して後世に繋げていき、魅力ある商品や仕事にしたいと思っています。また、これからは制作だけでなく実演や体験などを通して、この木杓子の良さや使い勝手、手仕事の素晴らしさをみなさんにお伝えして行きたいと考えております。